2階にある職員室を出て、3階にある教室に向かおうと、階段をのぼり始めた所で、友達に抱きかかえられるようにして、下りてくる女子生徒に会いました。よく見てみると、うちのチームの1年生達でした。
かつてのアイドル、黒木真由美さん(マスターズ世代の方はご存知ですよね)によく似た笑顔のかわいらしい少女が、顔をこわばらせて、やっとの思いで脚を動かしている―という様子でした。なんでも、その日の朝の練習で腰を痛め、これから病院に行くとのことでした。他のスポーツ同様、チアーやダンスの世界でも小さな怪我は日常的におきるもので(もちろん、しなければしないにこしたことはありませんが)メンバー達も、その小さな怪我を経験することで、自分達の身を守ること、つまり、怪我をしない体づくりを覚えていきます。ですから、その時も私はさして気にとめることはありませんでした。
その日の夕方、グランドがすっかり暗くなり(茅ヶ崎高校チアリーディング部の練習はサッカー部、野球部と仲良くグランドを共有しあいながら、外で行われています)、最後の挨拶を交わした頃、先程通院のために早退をしたはずの彼女が私の前に現れました。彼女の口からまず出た言葉を聞き、私は胸が苦しくなりました。
「先生、すみません。」― 骨が折れていて、全治2ヶ月、という診断を受けてきたのです。
メンバー全員、10月28日の演技を、それはそれは楽しみにしています。彼女だって、思いは他のメンバー達と同じです。一緒に練習してきた仲間たちと、同じ晴れ舞台に立てないと知らされた時の、悲しみや苦しみ、そして悔しさはどれほどのものだったことでしょう。それなのに、私に向かって発した第一声が、謝罪の言葉だなんて―
チアーはチームでの演技です。だれかひとりでも欠ければ、構成をまた、一から作り替えなければなりません。彼女は自分のことよりも、自分が抜けることでチームや私にかける迷惑のことを、まず心配したのです。
いじらしくて、いとおしくてたまらなくなりました。
少女の思いは、他の19人のメンバーがちゃんと演技に込めて、見てくださる人々の心に確かに伝えてくれるものと信じています。 |