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第6話
 記録的な猛暑から一転、急に寒くなった今日この頃、私の勤務する茅ヶ崎高校でも、多くの生徒が体調をこわし、2年生の担任をしている私のところには、休み時間ごとに、早退をしたいという生徒たちがやってきます。
ランサーズのメンバーの中にも風邪をひいている生徒達がいます。でも、誰も早退をしようとはしません。10月28日の大切な本番の日が近づいているからです。あまりの気迫に風邪の菌のほうが、恐れをなして早々に退散してくれているのかもしれません。

20年間、女子高校生にダンスを教え続けてきた私の目から見て、最近の子供たちと、以前の子供たちとの間には、大きな違いがあるように思われます。最近の子供たちは本当に病気や怪我に弱いのです。以前の子供たちは、私が注意して見ていないと、死んでしまうのではないか、と心配になるほど、ギリギリのところまで、練習をしていました。最近の子供たちは「足をひねった」と言っては休み、「肩が痛い」と言っては休みます。「事故防止」「安全管理」ということが声高に叫ばれ、部活中の怪我が大問題になるような世の中ですので、私も仕方なく、本人の意思にまかせ、練習を休ませるようにはしています。手遅れになるほど我慢をしてほしいわけではありません。でも、社会全体で子供達を精神的に弱くしてしまっているような気がしてならないのです。

「先生、足がちょっと痛いんです。どうしたらいいですか?」
「何が?」
「練習なんですけど〜」
「自分でできると思えばやったら。」
「じゃあ、あの〜できそうにないので、休みます。」

最初から、休むつもりでいながら、その決定を私にさせようとしているのです。自分から「休む」と言うと罪悪感があるけれど、先生に言われたなら、安心して休める、というわけです。このような会話を交わす子供は、たいてい長続きせず辞めていきます。もちろん、最近の生徒達の中にも、以前の子供達のように、注意をしていてあげなければ心配な子もいますけれど、その数は以前よりずっと少ないのです。

マスターズリーグ「東京ドリームス」でもご活躍の江夏豊選手のエッセイの中に、興味深いお話がありました。 ピッチャーが肩に違和感があるといえば、コーチは、無理するな、休めよ、というのがいま。僕らのころは「肩がちょっとおかしいんです」といえば、「おかしかったら笑えよ」という答えが返ってきた。いや、マジな話、そういわれた。痛いと100回いって治るんだったら100回いえよと。治るんだったらいえ。治らんだろ。だったら黙って投げろとーーー。
※「Number 611」(株)文藝春秋社発行9/30号より
<2004-10-26>
 
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