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第9話 10月28日当日(その1)
「終わっちゃったんですね!」
メンバーのひとりが、つぶやきました。

 あっというまの出来事だったような気がします。 わずか10分間の演技。でもその10分間の演技には、メンバー達の苦しみや悲しみ、そして悔しさで流したたくさんの涙が込められていました。私達にとって生涯、忘れられない大切な10分間でした。  不安と緊張と、でも大きな喜びの中で待ちに待った10月28日が、とうとうやってきました。 自宅を出て茅ヶ崎高校に向かう国道134号線、車を走らせる私の前方には、白い雪をいただいた秀麗富士がそびえたっていました。毎日、眺める景色でも、その日ばかりは、何か違ったものに見えます。それに美しい雪をいただいた富士山をながめるのは、今年にはいってはじめてです。 「一富士、二鷹、三なすび」と言いますが(今の子供達にはなじみのない言葉ですけれど)、大切な日に、美しい富士の姿を、しかも、今年はじめての雪化粧したうつくしい富士山を朝から見ることができて、なんとなく心躍る気分になりました。 「大丈夫、見守っているから」 そう言ってくれているような気がしました。

 私が学校に着く頃には、高校生のメンバーは全員、 部室の前に集まっていました。その日の出発について 、最終的な確認をしているようです。 「子供達はどんな顔をしているのかしら? 1年生なんて不安で今にも泣き出しそうな顔をしているのではないかしら?」 私は怖くて、みんなに会うことができませんでした。

    朝のHRのため、担任をしている2年3組の教室に入りました。私のクラスにもランサーズのメンバーがふたりいます。そのうちの一人で一番前の席に座っている子と目が合いました。キラキラ輝く目で私を見つめて、微笑みかけてくれました。 言葉に出して言わなくても、心で伝え合うことができます。そのかわいらしい微笑みがメンバー達の気持ちを私に伝えてくれました。 「先生、私達、絶対、大丈夫!!!!!」
<2004-11-01>
 
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