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第17話「マスターズリーグのサムライ達」
 イニング間の演技の前、ランサーズのメンバーは、グランドに通じる通路でじっと息をひそめて出番を待ちます。
ランサーズが使っているポンポンはメタリック製なので、ちょっと手を動かしただけでカサカサと大きな音が出てしまいます。ですから、メンバーはみんな親指と人差し指でポンポンをつまむように持って、音をたてないように気をつけています。普段からそのような注意をしてきましたが、特に今回マスターズリーグの試合では、さらに細心の注意を払うようになりました。マスターズリーグの試合では、出番を待つ通路にいてもピッチャーの投げたボールがキャッチャーミットにおさまる音、そしてバットがボールにあたった時の音が、とてもよく聞こえます。不思議な静寂の中で空気を切るようなその音には、胸に響く心地よさがあります。

それぞれのチームを応援するファンの人々の大声援や、笛や太鼓の奏でるリズムは、心躍る楽しいものですし、スタジアムで感じるあのファン同士の一体感というのもたまらないものです。でも、それとはまた違ったマスターズリーグ特有(?)のこの雰囲気も、なかなか良いものだと思います。たった一つの小さな白球の行方を、広いスタジアム中の大勢の人々がじっと見詰めているって、なんとなくドラマチックな感じがしませんか?

  ピーナッツやポップコーンを片手に、ビールやコーラを飲みながら野次を飛ばし、(日本と同じように)大きな声で選手の名前を連呼し、野球観戦をするのが大好きなアメリカ人。でも、彼らが唯一野次れない選手、それがイチロー選手だといいます。

  ダグアウトからウェーテイング・サークル、そしてバッターボックスへ―――そこまでのひとつひとつの所作と間合いがいつでも変わることなく、一定の型どおりに、一定のリズムで行われている。その一連の所作があまりに美しく、崇高な雰囲気さえもかもしだしているために、その雰囲気を壊すことができないというのです。

マスターズリーグのグラウンドで、私は同じようなことを、間近で体験しました。出場されている選手の皆さんのプレーやたたずまい、打席に入る所作やフォームには、数多くの修羅場をくぐりぬけてきた歴戦の兵の風格が漂い、思わず惹きつけられてしまいます。

私自身、ランサーズの代表として精一杯演技を続けていますが、年齢とともに1年毎に衰える体力―どんなに努力をしても、そればかりは自分の力ではどうにもなりません。若い頃には簡単にできた事が、今となっては自分でも不甲斐無いほどにできません。43歳となった今、若いメンバー達には決して理解できない気持ちと葛藤をしていました。
そんな時、マスターズリーグで演技する機会をいただいたのです。

10月28日の開幕戦、東京ドームのグラウンドに立った時、私の中に新たな勇気と力が沸いてくるのを感じました。日本のプロ野球界に輝かしい足跡を残し、支えてこられた方達が、現役を退き数年たった今、再び、ファンの前でプレーをなさっているのです。55歳を迎えた村田兆治さんが140Kmの速球を投げ、その投球を62歳の伊藤さんが受けている。選手の皆さん、おひとりおひとりが真剣に、そして精一杯の素晴しいプレーを(しかも心から楽しそうに顔を輝かせて)グラウンドで披露されていたのです。

  いぶし銀の輝きを放ち、人々に勇気を与え続けるマスターズリーグのサムライ達の姿に、私はすっかり心を奪われてしまいました。
<2004-12-10>
 
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