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第19話
日々高校生と接していると、その言葉遣いに慣れてしまって、それが本来の日本語の表現であるかのような錯覚をおこします。日本語本来の美しい響きや表現とかが、どんどん失われていくことに深い悲しみを覚えます。

  今どきの高校生や若い人たちがほとんど口にしない、そのような言葉があることすらも知らない日本語の表現が、いくつもあるように思います。 そのうちの一つが、「おかげさまで。」ではないでしょうか?

 数年前に亡くなった私の母は、妻として厳格な父を支え、家族を守り、不平不満の一言も口にしたことのない、腰の低い、古風な女性でした。その母がいつも口にしていたのが、「人様のおかげで」という言葉でした。何かうれしいことや楽しいことがあると、必ず「ゆかりちゃん(私の名前です)のおかげ」「○○さんのおかげ」と周りの人に感謝をしていました。私は母が使う、その言葉の響きがたまらなく好きでした。

   卒業した生徒達の結婚式に列席させて頂く事があるのですが、その折なども卒業生達の幸せを祈りながらも、つい、主役達の挨拶の言葉が気になります。ご両親や、お世話になった方々への気持ちとして「心から感謝をしています」という表現はよく耳にしますが、「お父さんのおかげで」「先生のおかげで」という言い方はあまり聞いたことがありません。 今は死語となってしまったかのような、その言葉を神奈川県立茅ヶ崎高等学校チアリーデイング部の生徒たち、そして茅ヶ崎高校と神奈川県立住吉高校チアリーデイング部の卒業生たちは、ごく自然に口にしてくれます。

 彼女たちの血のにじむような努力によって日本一の栄冠を勝ち取り、その喜びにひたっている時に、或いは、人生の門出の日に多くの人々の祝福を受けている時に――彼女たちは私に言ってくれました。 「先生のおかげです。」

  人生最高の幸せを味わいながら、他人への感謝の気持ちを忘れず、ごく自然にそのような言葉の言える彼女たちを、私は人間として尊敬をしています。そんな彼女たちに「先生」と呼んでもらえる立場にあることを考えると、改めて身の引き締まる思いがします。

    茅ヶ崎高校チアリーデイング部が夏に全国優勝をした時、地元のタウン誌の記者の方が、部長のEちゃんにインタビューにみえました。

「これからの目標は」という質問に対し、彼女の口から出た言葉は――
「お世話になった先生の為にも来年は世界一になりたいです!」

  彼女がそう言ったことを、後に、記者の方からうかがった時の私の気持ちは、ここで言葉にするまでもありません。
<2004-12-23>
 
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