12月5日の夜―東京ドームの真ん中に、大きなクリスマスツリーが立ちました。
もちろん、本物のツリーではありません。ランサーズのメンバー達が立てた、いろいろな思いのこもった大切なクリスマスツリーです。
12月5日の演技の構成を考え始めた時、まず私の頭に浮かんだのは、クリスマスソングを使うこと、そして、クリスマスツリーを立てることでした。クリスマスの季節らしく、明るく元気に、そして楽しく、見ている人々の顔に大きな笑みがこぼれるような、そんな演技を作りたいと思いました。
私の考えをメンバーに伝え、実際、試みてみました。試行錯誤を繰り返し、いろいろやってみるのですけれど、なかなか私の理想どおりにはいきません。
多くの、観衆の前でやらせて頂くわけですから、絶対に失敗のないもの、見ている人に不安を感じさせない作品にしなければなりません。ですから、彼女たちの技能・能力の範囲で無理なくできるものにしなければならないのです。何度も何度も色々な形を試み、やり直しを繰り返しました。そして、やっと彼女たちが自信をもってできる構成が決まり、たくさんの練習をしました。でも、どうしても、ちょっとずつタイミングがずれて、全員の息がぴったりと合うということがないのです。
茅ヶ崎高校では、12月3日から、期末試験が始まっていました。高校生のメンバー達は、練習と勉強と、どちらも手を抜くことができません。演技の完成のことを考えれば、いつまでも練習をしていたいくらいでした。でも、彼女達の勉強時間確保のために、それもできません。12月5日のことは早くから予定していましたから、試験準備も演技の練習も、早めに進めていたつもりでした。でも、いざ近づいてくると、なかなか心落ち着けて準備をすることができません。メンバー達も私も言いようのない苛立ちで、気持ちの動揺は日毎大きくなっていきました。その心の乱れが、演技の完成を妨げていたのかもしれません。
前日の練習は、練習場として貸して頂いている体育館内での思いがけないハプニングにより、練習時間が短縮され、思いどおりの練習をすることができませんでした。いつもは翌日の演技の成功を確信しつ、笑顔で終わりの挨拶をするメンバー達が、今回だけは、不安で暗い表情のまま、後味の悪い別れ方をしました。
そんな不安をかかえたまま迎えた当日―東京ドームではマスターズリーグの試合の前に、別の試合が組まれているので、通し稽古までに十分な練習をすることはできそうにありません。メンバー達は各々、自宅からすぐに練習を始められるような格好で集合し、到着次第に準備に入ることにしていました。
ところが、その日は前夜の強風のために、JRのダイヤが大幅に乱れました。道具を運ぶために早めに集まっていた私とトップチームのメンバー達より、遅く出発をした高校生のメンバー達が、なかなか到着することができません。予定よりもかなり遅れて到着した高校生達の顔は、まさに顔面蒼白で今にも泣き出しそうな顔です。高校生達の気持ちがやっと落ち着いた頃、今度は、私が顔面蒼白です。通し稽古をさせて頂けるとうかがっていた時間が刻々とせまってきているのに、控え室はもちろんのこと、ドーム内に入ることもできないのです。メンバーたちの顔に不安の色が濃くなってきました。
私もメンバー達も、焦る気持ちを何とか抑えながら、関係者入り口そばにわずかばかりのスペースを見つけて、とにかく少しでも練習をすることにしたのですが、スタンツ(組み体操)をあげるたびに生徒たちの頭が天井についてしまいそうです。でこぼこの地面ではラインダンスの練習も充分にすることができません。私の気持ちは、不安を通り越してすでに恐怖になっていました。でも、彼女たちは私が考えているより遥かに強く、そして逞しく成長をしていたのです。黙々と練習を続けていた2年生のEちゃんが、かわいい笑顔を見せて、叫びました。
「今日はよく脚があがるー!」
「私もー。」
他の2年生達が応えました。
なんていう子達でしょう!私の不安は、彼女たちの笑顔で一気に吹き飛んでしまいました。踏まれても踏まれても、頭を上げる雑草の強さを感じました。そして私は今までも、その強さとやさしさに、何度も励まされ、癒され、数え切れないほどたくさんの喜びと感動をもらってきたのを思い出しました―「絶対に、成功する!」
「おおーっ!」
演技を続ける私の耳に、大きな歓声が聞こえてきました。演技のクライマックス、大きなスタンツをあげて、クリスマスツリーを完成させる場面です。
「うまくあがったんだ!!!」
その途端、胸に熱いものがこみ上げてきました。練習時には一度として、成功できなかったのに――。
子供達みんなで手分けして探してきてたモールと、
一生懸命に作ったオーナメント(クリスマス飾り)で創り上げた素敵なクリスマスツリー。
きっと見てくださった方々の心の中に、暖かな明るい光を放てたと信じています。 |