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第28話 『イーグル』
 今季、プロ野球界に新規参入をする球団の名前に「イーグル(わし)」という鳥の名前が入っているため、
また、今年が酉年であることもあり、イーグル(わし)という名前がにわかに注目を集めました。
  ランサーズにもすばらしいイーグルたちとの忘れられない素敵な思い出があります。

  そのイーグルたちというのは---------ナイジェリアナショナルチーム「スーパーイーグルス」の選手達です。
  2002年に日韓共催で、ワールドカップサッカーが開催されたとき、ナイジェリアナショナルチームが平塚市を、その事前キャンプ地としました。ランサーズは、3月から始まった記念式典、イベント、そして、地元、神奈川のプロチームとの親善試合など、様々な場面で、演技披露の機会を頂きました。

  ナイジェリアサッカー界での、いろいろなトラブルにより、首脳陣の組閣、そして代表チームメンバーの選出が遅れ、ベストメンバーによる万全の体制による大会出場では決してなかったと、うかがっています。でも、監督や選手との交流は、ランサーズのメンバー達の心に、たくさんの思い出を残してくれました。

 オニグビンデ監督は、若くして海外にサッカー留学をした、サッカーエリート。長く教師として指導にあたり、ナイジェリアのサッカー発展の礎を築かれた方です。話しをするときにはいつでも穏やかで優しい微笑みをたたえ、包みこむような暖かな雰囲気を持った素敵な紳士です。私が高校の教師ということで、若い人たちへの指導の仕方、チームのまとめ方など、いろいろなことについて話をしてくださいました。 私がナイジェリアチーム選手のことが書かれた新聞や雑誌の記事を持ってうかがうと、それを楽しそうにご覧になり、いろいろな興味深い話も聞かせてくださいました。

   今、思い返してみると、大変、失礼なことをしましたが、
私は監督に 「決勝リーグに勝ち残れる可能性は?」とうかがったことがあります。
「う〜ん」と首を振られてから 「無理だと思う。」 と、おっしゃいました。

  ナイジェリアは、イングランド、アルゼンチン、スウェーデンといった強豪ひしめく予選グループに入っていました。カヌー、オコチャという世界的に活躍をしている2人の選手を擁しながらも、ほとんどは、国際試合の経験のない選手ばかりの若いチーム。チームの総合力を考えれば、その答えは最ものことです。

  それにしても、ナショナルチームの監督が、こうもあっさりと答えてしまうことに、私はとても驚きました。私の表情から、私の思いを感じ取ってか、監督はこう、話を続けてくださいました。

「可能性があると信じて戦いたい、というような答えを期待したかもしれない。 
でも、スポーツにおいて、特に、そのスポーツ界の頂点に立つような国際試合においては、偶然による勝利というものは決してありえない。」

  サッカーについて、発展途上国であるナイジェリアの若い選手たちが、たくさんのことを学び、それを、自国の発展のために生かしてくれることが、何よりの願いである、ともおっしゃいました。

「偶然による勝利などありえない」  この言葉は私の胸に深く突き刺さりました。
 どのようなスポーツの世界にあっても、勝者として人々の賞賛や尊敬を受けている選手達の、その栄光は、それを裏付けるだけのたゆまない努力の積み重ねがあってのものだ、というのです。当たり前のこととわかっていても、監督に言われ、あらためて、肝に銘じるところがありました。

 実際、ランサーズのメンバー達と親交を深めた選手たちは、メンバーたちと同じ年頃の若者たち。サッカーを離れれば、日本の同世代の若者たちと変わりはありません。家族にお土産を買った、と言っては、それをうれしそうに見せてくれるような優しい男の子たちでした。知識・技能それに経験、あらゆる項目で比較してみたところで、ナイジェリアが他のチームに勝てる勝算は素人が見てもごくわずかでした。

 「わあー!」  スーパーイーグルスの選手たちがピッチに現れると、スタンドから大歓声がおきました。
  黒く光り輝く肢体が、緑色のピッチの上で、軽やかに、そして大きくしなやかに動いています。
サッカーをしているのに、まるで、神々に捧げる踊りを踊っているかのように、優雅で崇高な雰囲気さえも漂わせています。

  人間の体というのは、こんなにも美しいものだったのだと、あらためて感じることができました。
  サッカーについての知識はほとんどないので、プレーのひとつひとつについて、評価をすることはできません。
でも、その体の動き、流れのうつくしさは、素人の私にも、大きな感動と興奮を与えてくれました。

 ランサーズが贈った千羽鶴をベンチに飾り、戦ってくれた選手たち。勝利こそはありませんでしたが、「精一杯の健闘を」と願ったランサーズのメンバーたちの思いは、選手たちに届いていたと思っています。
私達の前で、少年の笑みを見せてくれた選手達が、戦う大人の顔となり、世界中のスポーツファンを魅了してくれる日が必ずやくることと信じています。
 
<2005-02-25>
 
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