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第41話 『1800キロカロリーの夕食』
 選手の生活全般について管理をされていて、選手にとっては「お父さん」のような役目を果たされている寮長さんが、選手達の夕食のことについて、説明をされていました。

ロッテの選手達は、毎日、2000キロカロリーの夕食を口にするとのこと。実際、テーブルの上に並べられた料理の数々は、食いしん坊の私でさえも、とても食べきれないほどのすごい量です。
「若い選手は食べるのが仕事ですから。」

横浜ベイスターズの寮長をされている竹田氏に、この話をしてみました。
「うちの食事は12球団一だよ!!」

 最近の若い選手達は、以前の選手に比べると、とても食が細く、一度に食べられる食事の量は同世代の普通の男の子達と変わらない。そこで、一日に4000キロカロリーが摂取できるように、バランスのよい3食の食事が用意されている。
だから、選手達が残さずに食べられるように夕食は1800キロカロリーなんだそうです。

 スポーツ選手にとって、食事は、栄養の摂取ということばかりでなく、
集中力を高めるトレーニングとなる大切な行為ではないかと私は思っています。
2002年、日韓共催で開催されたサッカーワールドカップ。
日本のナショナルチームを指揮するトルシエ氏が興味深い発言をしていました。

「日本のナショナルチームの弱さの原因はコンビニエンスストアに向かう選手の姿。」

 専門の栄養士さんが、あらゆるデータをもとに、選手達に最もふさわしいメニューを用意する。それを一流の調理師さんが調理する。でも選手たちは、好きな時に好きなものを、コンビニで買って食べてしまうから、出された物を全て平らげることができない。そのため、摂取する栄養のバランスがくずれてしまう。その上、深夜でもお腹がすけば、コンビニエンスストアで好きな食べ物だけを購入してしまう。「今は食べる時間」という緊張感がない。それが、日本チームの選手の集中力を衰えさせている、というわけです。

 食事に対しての意識の希薄さ、自らを律する事ができない弱さ、時間の使い方(メリハリが作れない)の下手さが見て取れるというのです。

 その時も私は「なるほど・・」と思ったものですが、後に、ランサーズの海外遠征時の光景で、トルシエ氏の言葉の意味を現実に噛み締める事になりました。

 ランサーズの高校生は、7月20日、オーストラリア・アデレード市にて開催される世界大会に向けて、出発をします。4年前にも、やはりアデレードに遠征に出かけたことがあります。 アデレードは、ヨーロッパからの観光客の多い、落ち着いた雰囲気の美しい町です。高い建物も少なく、町全体の色調も統一されています。大型のショッピングモールや街角の商店街以外には、ほとんどお店がありません。

 従って、日本で修学旅行や遠征の時によく見かける、夜や自由時間にコンビニに出かける姿(お菓子などの詰まった袋を提げて帰ってくる姿)を見る事は有りませんでした。

 そして、その遠征中の3度の食事時――全員が、ほとんど無言で食べています。殺気のようなものさえも感じられます。大会やイベント会場で、そして合宿の時に、それまでも生徒達と食事を共にしたことがよくありました。でも、そんなに夢中に食べ物を口に運ぶ生徒達の姿は一度も見たことがありませんでした。

まさに
「今、食べておかなければ――!!!」
という雰囲気です。

真夏の日本から、冬のオーストラリアに行き、行ったその日のうちのリハーサル、そして翌日には大会、と、かなりハードなスケジュールであったはずなのに、生徒達の中で、体調を壊した者はひとりもいませんでした。
規則正しい食事時間・栄養バランスの取れた食事が、生徒達の体調を良い状態にキープしてくれたことは、間違いありません。

さらに、その
「今、食べておかなければ―――。」
という食事に対する集中が、世界大会という独特な雰囲気を持った重苦しい会場においても、生徒達が平常心を取り戻し、演技に集中できるリハーサルのようになっていたように思えてならないのです。

「食事」(内容だけでなく、環境や時間も含めた)という行為の持つ重要性を再認識する出来事でした。
<2005-06-30>
 
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