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第47話 『日本大会』
  オーストラリアでの思い出話に花を咲かせる間もなく、
生徒達は2週間後にせまった日本大会のために、また厳しい練習を始めました。

オーストラリアで演技をしてきたチアーのカテゴリーの他に、日本大会では「ノベルテイ」という部門にも出場をします。
その演技がまだ仕上がっていなかったのです。

何か有名なキャラクター、或いは動物などに扮し、その個性をどれほど演技の中に演じ出せるか――それが、採点の大きなポイントとなります。

  今年、茅ヶ崎高校が選んだのはアラジンに出てくる「ジャスミン」。
決めた日から、私が家で見るビデオは「アラジン」とインド舞踊のビデオばかり。そして通勤途中で聞くのは、いつでもインド音楽となりました。  
お母さん達の愛情のこもったお衣装を着た生徒達のかわいらしさといったら―― マスターズリーグファンの皆様にお見せできなかったのが残念でなりませんでした。

 手先・足先の細かい動きにまで注意を払い丁寧に演技を仕上げていきました。生徒達は私のわがままな注文にもよく応えてくれました。そして、演技は着々とできあがっていきました。でも、何かが足りない――。

 生徒達を集め、別の学校のダンスドリル部の先生の話をしました。  その学校は、日本で大会が開催されるようになってすぐの頃より、ずっと「ノベルテイ」部門に出場をしている名門校。指導をされている顧問の先生とは、お互い忙しい日々の中でなかなかお目にかかれないものの、手紙などを通じて連絡しあい、親しくさせて頂いていました。

  その先生が一昨年、突然、癌で倒れられたのです。ずっと、あまり芳しくない状況とうかがっていました。
でも、今年6月、東日本大会の予選会場で、わざわざ私に会いに来てくださったのです。抗癌治療の副作用による症状のために、かつらをつけておいででした。ふくよかで、優しい面立ちだったその顔は、驚くほどにやせて、まるで別人のようでした。 病気との闘いがどれほど厳しいものであったか、想像するに余りあるものでした。
「生徒達に生き返らせてもらいました。」

  そう言って、はらはらと涙を流される、その先生の手を私は思わず強く握り締めました。でも、その手のか細さが悲しくて、涙が止まらなくなりました。   違う病ではあっても、やはり大病を患った私には先生の悲しみ・苦しみ、そして 切なさが痛いほどによくわかりました。

「しっかり、戦いなさい。精一杯、演技をすることが、その先生と先生の生徒さん達への最高の思いやり!」

  技と技、力と力、気迫と気迫のぶつかり合いでした。  見ている人々の心をゆさぶる見事な競演でした。
部門第3位という成績でした。生徒達にとっては、満足のいく順位ではなかったかもしれません。
でも、まさに、命がけの勝負の場にいられたことは、生徒達にとって、かけがえのない大切な経験となりました。

  スポーツというドラマに感動するのは、そこにシナリオとセリフがないから。
その言葉どおりのすばらしいドラマを見せてもらいました。
 
<2005-10-04>
 
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